ココカラゲンキ!

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「独学の技法」は、21世紀型の知的戦闘力を高める超優良な指南書だ

こんにちは、kaakikoです。

 

仕事をしていると、誰しもが一度は転職を意識すると思います。

そんなとき、「あなたには何ができるのか」「あなたを雇わなければいけない理由は何か」と問われると、答えに詰まる人もいるかもしれません。

今回は、「もっと自分の市場価値を高めていきたいけど、何をしたらいいか分からない・・・」と迷われる社会人の方に、「独学の技法」をご紹介します。

 

 

この本の一番の特徴を述べるなら、

「ビジネスをリベラルアーツと掛け合わせて、独学の技法を体系的に説明している」

ということでしょうか。むろん、独学の目的はただの「お勉強」ではなく、「社会人としての知的戦闘力を高める」ことです。

 

リベラルアーツとは、平たく言うと「教養」です。

たとえば、自然科学や哲学や宗教、歴史など、一見するとビジネスにはすぐに役に立たない、しかし社会や人間の本質について洞察を与えるような分野に対して目を見開くことの重要性を述べています。

 

従来、社会人の戦闘力を高めるための三種の神器は「英語」「IT」「財務」と言われていました。しかし、山口さんは全く異なる切り口から独学の戦略と仕組みを体系的に提案しています。

 

平易な表現で具体的に語りつつも、データと実体験を融合させながら骨太な主張を展開していますので、非常に読み応えがあります。

 

 

著者は、独学を通じてキャリアを築いてきた方

著者の山口さんは、慶應大→電通→ボスコン→組織開発コンサルタント・大学教授・社外取締役と、多方面で活躍されている方です。キラキラな経歴ですね。

山口 周 (やまぐち・しゅう)
1970年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通ボストン・コンサルティング・グループ等を経てコーン・フェリーに参画。
現在、同社のシニア・クライアント・パートナー。
一橋大学経営管理研究科非常勤講師、株式会社モバイルファクトリー社外取締役、株式会社ライプニッツ代表。

 

そんなビジネスの最前線で活躍する山口さんは、実は外資系コンサル出身者には比較的珍しい「哲学・アート系」のバックグラウンドをお持ちで、「ビジネスに必要な知識は、全部独学で習得してきた」とおっしゃっています。

外資系コンサルにありがちなMBAも取得していません。

そんな仕事人生を歩んでいる私ですが、これらの仕事をするために一般的に必要だと考えられている科目であるマーケティング経営学、あるいは組織論や心理学について、学校で正式に学んだことは、実は一度もありません。つまり、すべて独学です。

 

独学で勉強してそのキャリアが築けるのであれば、「職歴がない」「実績がない」などと「自分に足りないもの」ばかり見えてしまう私たちにも、一筋の希望の光が差し込んできますね。

 

21世紀が求める「知的な革命家」

山口さんが本書で最も訴えたいのは、「知的な革命家」、つまりイノベーションを起こせる人になれということです。

 

知的な革命家は、私たちが無意識にもつ「前提」そのものに切り込んで、本当のあるべき姿を追求する人のことです。

今後の社会において求められるのは、誰よりも「知的な革命家」だという点です。

現代社会のさまざまな領域において発生している制度疲労を打破するには、疲労した現行のシステムを前提にした知識ではなく、もっと本質的かつ骨太な知性が必要になります。

(略)

「システムを前提にしない知識」とはどんなものかというと、これは哲学が典型ということになります。(略)それは「システムを批判的に考察する技術の体系」ということになります。

システムを所与の条件として考えることなく、自分が依拠しているシステムそのものを批判的に考察し、場合によってはシステムの改変やりプレースを提言する。

(略)

私は、本書を通じて、自分が構築した「独学の技術」を社会にばら撒くことで、企業内にとどまりながら、企業の力をうまく活用して社会変革をリードしていく「知的な革命家」をたくさん養成したいと考えています。

 

実は、私も会社内にて「既存システムを疑って変革する」ことの重要性を強く痛感していたので、山口さんの主張は個人的にとても胸に響きました。

 

私の会社内には、おもに集客を担当する「マーケティング部」と、収益化をする「営業部」の2部門が連携して売上を上げているのですが、数年前まではお互い積極的に情報交換することはほとんどありませんでした。

 

マーケティング部では、企業努力を重ねているにも関わらず、集客数が伸び悩んでいた時期が一時ありました。また、営業部のほうでも、毎月の部全体の売上目標が未達成の状態が数か月続いていました。

そういうときは通常、営業部内で「もっと成約率を上げよう」と上司から発破がかけられ、私も「どうしたら成約率を上げられるのか」という点にのみ意識を向けます。

 

しかしある時、営業部内の数名が、「そもそもマーケティング部と営業部の連携がないのはおかしいよね」と声を上げ始めたのです。

彼らは、「営業部内で顧客の声を大量に保有しているのに、どうしてマーケティングに生かそうとしないのか」と鋭く指摘しました。

 

当然、マーケティング部からは「自分たちを信用していないのか」と猛反発をくらいましたが、結果的に、上司の仲介で両部署の話し合いの席が持たれるようになりました。

 面と向かってお互いの本音や、相手に対して持っていた疑念を洗いざらいぶつけ合うことで、これまで縦割り状態だった関係性に少しずつ「雪解け」が見られるようになったのです。

 

このような企業内イノベーションも、結局は既存のシステム内だけではなく、それを飛び越えて「ほんとうにそれでいいのか」「もっとよいやり方はないのか」という目線で、あるべき姿を問いただすことで初めて実現できたことです。

 

専門性だけで戦える時代は終わりを迎えつつある

昨今、人材育成・組織開発の世界でよく言及されるのが「π型人材」の重要性です。

(略)

今日のビジネスでは様々な専門領域が密接に関わりあうようになってきています。

このような世界において、専門性だけを頼りにして蛸壺にこもるような人材のみで構成されたチームでは、イノベーションを推進していくことはできません。イノベーションという言葉の生みの親であるシュンペーターが指摘したとおり、イノベーションというのは常に「新しい結合」によって成し遂げられるからです。

この「新しい結合」を成し遂げるためには、それまでに異質のものと考えられていた二つの領域を横断し、これをつなげていく人材が必要になります。

 

私は入社以来ずっと営業をしています。マーケティングも勉強したことないし技術もよくわかりません。財務系の知識にも乏しいと思っています。

そんな私は、仕事をしていてふと「自分の人生はこのままでいいのだろうか」と思うときがあります。「今の会社を出たら、自分を必要としてくれる会社はあるだろうか。ほかの会社で自分は通用するのか」と。

その、胸の中の妙なざわつきをうまく言語化してくれたのが本書です。

 

だれしもが目の前の仕事には一生懸命取り組むと思いますが、それだけでは本当の問題解決にはならないし、そもそも生き残ることもできません。

 

特に、昨今はAI開発が全世界的に推進されています。そうなれば、与えられた業務システムの中だけで動き、専門性を深めるだけの職種は、間違いなくコストカットの対象となってしまいます。その代り、AIには出来ないこと、つまり前例を崩して新たな活路を見いだせる人が求められていきます。

 

だからこそ、専門の境界を超えて、全体的視点から新しいモノを創造できる知性が、21世紀において高い戦闘力を持つようになるのです。

 そのために、リベラルアーツが重要になってくるのです。

 

知的戦闘力を最大化する独学の鍵

では、知的戦闘力を高めるためにはどのように独学をしていけばよいのでしょうか?

詳しくは本書に譲りますが、私の中で「これは!」と思ったものをピックアップしてご紹介していきます。

独自のテーマを持ってジャンルをクロスオーバーする

 山口さんは、本の中で「独自性を高める」ことを強く意識して論理展開しています。

そのためには、従来の大学での勉強法のように、すでに体系化された知識を単になぞるのではなく、私たちが独自に持つテーマと観点から、知識領域を縦横無尽に飛び越えて(クロスオーバーして)追求するからこそ意味があるということです。

テーマとは、自分が追求したい「論点」のことです。

独学の戦略を立てるというと、「どのジャンルを学ぶか」と考えてしまいがちですが、これをやってしまうといつまでたっても知的戦闘力は上がりません。なぜというと、ジャンルに沿って勉強をするということは、すでに誰かが体系化した知識の枠組みに沿って勉強するということですから、その人ならではの洞察や示唆が生まれにくいのです。

(略)

私の場合は「イノベーションが起こる組織とはどういうものか」というテーマを持って独学に臨んでいますが、組織における権力構造のありようについては、さまざまなジャンルのインプットから示唆を得ることができます。

たとえば、塩野七生の「ローマ人の物語」、あるいはマキャベリの「君主論」、あるいはフランシス・コッポラの映画「ゴッドファーザー」、あるいは「サル学」などの霊長類研究は、それぞれ「権力はどのようにして発生し、維持され、あるいは崩壊するのか」という論点について、さまざまな気づきを与えてくれます。

(略)

 

この話は、営業をやっている私自身はすごく共感できることです。

 

営業の本質は、「顧客の脳内にパラダイムシフトを起こすこと」だと私は思っています。営業マンと話すことによって全く新しい概念が生まれるからこそ感動し、購買につながります。

そのため営業マンは、聴き手の期待を超えるために、多方面の知識を用いて主張を展開することが重要です。

 

たとえば私は、「コミュニケーション能力を鍛えることはなぜ重要なのか?」というテーマを持っているのですが、その論点に対しては、

  • 教育業界の観点文科省の号令でアクティブラーニングの試みが始まっていて、あと15年後には、コミュニケーション能力が高い人材と同じ土俵で戦うことになる
  • 所得の観点:所得を上げるには、「労働時間を長くする」か「付加価値を上げる」の2択しかない。付加価値とはすなわち、「人の上に立つ力=コミュニケーション能力」ということ。
  • プライスレスの観点:人からの愛情や友情・尊敬といった、人生におけるプライスレスなものは全てお金では買えない。すべて、コミュニケーション能力を上げることでしか手に入らない。

など、多方面の知識を動員して価値を訴求することが求められます。

 

ふっと湧き出る疑問や直感を大事にする

自分なりのテーマや知識のクロスオーバーといわれても、なんだか難しそうに感じる方もいるでしょう。

しかし、実際は「強制的に勉強する」というよりも、自分の心にたまたま引っかかったものを広げていく、というように、偶発性を大切にしている側面もあります(※太字は、本ブログ筆者による)。

ここで重要になるのが、「何の役に立つかよくわからないけれども、なんかある気がする」というグレーゾーンの直感です。

(略)

極論すれば、読書をどれだけその人のユニークな知的生産につなげられるかどうかは、この「この本にはなにかがある」という感度の強弱によって大きく左右されてしまいます。この感覚は、ハンターが茂みの向こう側に獲物の存在を感じ取る感性と言い換えられるかもしれません。知的な営みにである読書においても、こういった野性的な感性は必要だと思います。

(略)

「なんとなく、これは役に立つかもしれない」という感覚で集められた道具が、後でいろいろと組み合わさることで、コミュニティの危機を回避する助けになる。同じような感覚が、独学にも必要だということです。

自分のテーマや学習すべきことは、人から与えられるものではありません。

自分の感性や心がビビッと反応したものを縦に横に広げていくことによって、だんだん自分独自の視点が固まっていきます。

 

そのためには、よくいわれるようにただ漫然と情報を眺めるのではなく、「自分なりの些細な問い」を出発点にして、その答えを得るためにインプットするとよいでしょう。

そうすると、きちんと積み上がっている感があってとても楽しいですし、しばらく経ってもちゃんと記憶に残っています。

 

どんな問いを持てばいいか分からない、という方には、足がかりとして3STEP思考法を以下の記事でご紹介しておりますので、よろしければ参考にしてみてください。

root-of-upward.hatenablog.com

 

行動につなげるために、知識を抽出化・構造化して仮説を作る

知識を得たら、そのままにするのではなく、必ず抽象化・構造化しましょう。

いわば、「個別の知識から本質的メカニズム・法則を見出す」ということですね。

 

私たちが独学をする意味は、単なる物知りになるためではありません。何かビジネスにおける意思決定なり行動を変えて成果を上げるために独学しています。

したがって、目の前の知識から何かしら示唆を得ることで、今の自分の問題意識と結びつける必要があります。

 

ただし、ここでいう示唆は1つの知識から抽出した話なので、この段階ではまだ仮説にすぎません。したがって、ほかの状況や情報と照らし合わせて検証していきます。

 たとえば蟻塚の例を挙げれば、「働き蟻ばかりの蟻塚よりも、多少サボり蟻が混じっている蟻塚の方が生存率が高い」というのが、蟻塚において固有に観察された事象であるとき、これを抽象化すれば「ある生産システム=Aを想定したとき、このシステムの生存確率の最大値は、稼働率100%のところより低いところにある」という仮説Bが得られます。

 

そしてこの仮説を、たとえばホワイトカラーの組織においては成り立つか?個人の仕事においては成り立つか?ほかの生物のコロニーにおいても成り立つか?を検討し、それらにおいて成り立つということであれば、この仮説Bは一定の確かさをもつことになります。

 

そしてこの仮説Bの持ち主は、たとえば組織設計の際、あるいはプロジェクトチーム組成の際、あるいは個人的な勉強スケジュールの立案の際、この仮説Bに基づいて稼働率に若干余裕を持たせた組織を、チームを、スケジュールを組むでしょう。

 

仮説を適用させるときも、領域のクロスオーバーが発生していますね。

「回転寿司のビジネスモデルが工場のベルトコンベアーの動きから発想された」というのは有名な話ですが、異なる領域であればあるほど、それが結びついたときに、ほかの誰にも想像できなかったイノベーションが生まれていきます。

だからこそ、多方面の知識を抽象化して自分のものにすれば、他人にはない独自の発想力=知的戦闘力の向上につながっていくのです。

 

 まとめ:本書をおすすめしたい人

今回は、「変化が激しい21世紀において独自性を高め、イノベーションを起こしていく」ための独学法に触れてきました。

この本は、以下の方に強くお勧めしたいと思います。

  • 将来に対して漠然とした不安がある人
  • 転職したいけれども自分に自信がない人
  • もっと自分の市場価値を高めて、自分にしかできない仕事をしたい人
  • 即効性のある知識だけではなく、ビジネスマンとして深みのある教養を得たい人
  • 単純に、知的刺激が得られるような話を聞きたい人

 

ビジネス書は正直当たり外れが多い分野ですが、この本は読んで損はありません。

きっと、多くの方にとって人生の転換点となるでしょう。ぜひ手にとってみてください。