ココカラゲンキ!

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知識を蓄えよ!センスがないと諦める前にやってほしいこと

こんにちは。kaakikoです。

 

突然ですが、質問です。

友人から「自分に合うセンスの良い服を選んでほしい」と依頼されました。

あなただったらどう考えてアドバイスしますか。

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 たぶん、私も含めて、答えに詰まる方も多いのではないでしょうか。笑

「そんなの、自分がいいなって直感的に思える服を選べばいいじゃん」という声が聞こえてきそうですが、それが最初から分かるのであれば、わざわざアドバイスを求めていませんよね。服の選択肢が多すぎて困っているから聞いているのです。

 

モノが溢れ成熟社会を迎えた21世紀の社会は、服に限らずコモディティ化された商品が数多く出回っています。差別化がしづらいがゆえに、企業は競合他社との熾烈な価格競争に晒されています。

 

だからこそ、私たち知的生産者が目指すべきは、際限のない価格競争から脱して、多くの人が直感的に「欲しい!」と膝を打つ新しい価値を発想し、提供することです。

しかし、斬新で誰もがあっと驚くようなアイディアを思いついたり、ヒット商品を連発することは、そう簡単にできることではありません。多くの方は、そのような「センスがある人」を”特殊な人”と見なして、センスの良いひらめきが出てこないと「自分には才能がない」と諦めがちです。

 

しかし、諦める必要は全くありません。

 

今回ご紹介するのは、水野学氏の「センスは知識からはじまる」です。

彼は美術大学卒業後、熊本県の公式キャラクター「くまモン」やNTTドコモ「iD」など、数々の大ヒット商品のクリエイティブディレクターを手掛けてきた方で、端から見ればまさに「センスの塊」のような方。

そんな彼は、センスは特別なものや先天的なものではない。知識による自己研鑽の賜物でしかないと断言しています。

この本を読んでいけば、知識を知ることの面白さや価値が深く理解できるようになり、知的好奇心がぐっと高まっていくでしょう。自分にはセンスがないと嘆いていた方にも希望の光が見出せるはずです。

 

今回は、その中から私が「なるほど!」と思った箇所を取り上げていきたいと思います。

センスを磨く第1歩は、知識を蓄えて「普通を知る」こと

センスがいい商品をつくるには、「普通」という感覚がことのほか大切です。それどころか、普通こそ、「センスのいい/悪い」を測ることができる唯一の道具なのです。

(略)

普通とは、「いいもの」がわかるということ。

普通とは、「悪いもの」がわかるということ。

その両方を知った上で、「一番真ん中」がわかるということ。

(略)

これは「普通のものをつくる」ということではありません。「普通」を知っていれば、ありとあらゆるものがつくれるということです。

ここでいう「普通を知る」という話は、常識という意味ではありません。

水野氏は、「普通を知る」ことの感覚を具体的に以下のように説明しています。

たとえばビートルズについて聞かれた時に、僕が「すごいんだよ」と言うのと、坂本龍一さんが「すごいんだよ」と言うのとでは、説得力が違います。音楽のプロである彼は音楽についての豊富な知識をもっていて、ありとあらゆる角度でビートルズを測ることができます。その結果の「すごいんだよ」だからこそ、説得力があります。

音楽への造詣が深い坂本さんは、「良い音楽とはこういうもの」という判断基準を数多くもっています。だからこそ、それを上回るものは「センスが良い」、下回っていれば「センスが悪い」と判断できるのです。

しかも、「センスが良い」という評価は論理的に説明できるので、他人からも共感を得られます。それが「買いたい!」という購買欲につながったり、仕事をお願いしたい!という信頼につながっていきます。

逆に、ビートルズしか知らない人の「センスが良い」という主張は、主観的な評価でしかないので、他人から共感を得ることが出来ません。

 

このように、センスとは「あらゆる角度から客観的に物事を視ること」とほぼ同じです。その方がより正しく判断できて、他人からより多くの共感を得られるからです。

 そのためには、様々な角度から広く客観的に知識(バックボーン)を蓄える必要があります。

 

新しい価値を市場に生み出す力は、知識から生まれる

知識とは紙のようなもので、センスとは絵のようなものです。紙が大きければ大きいほど、そこに描かれる絵は自由でおおらかなものになる可能性が高くなります。

道路を掃除する人は、「きれいな道路」という価値を生み出す仕事に就いているのですから、きれいにするとはどういうことかを知っていなくてはなりません。(略)そうした知識がなければ、マニュアル通りに動くしかなくなります。

 この言葉は、個人的に「ガツン!」と頭を殴られたような感じがしました。

自分が顧客に何を売っているのか?そしてそれを自分の言葉で語れるか?については、なんとなく考えてきたつもりですが、この文章を見て、実はあまり考えていないことに気づいてしまったのです。

 

その上で、水野氏はこう言います。

 イノベーションは、ゼロベースで何かをつくることではありません。世の中にすでにあるAというものと、自分が見たことのあるBをくっつけて、Cというものを生み出す。これを高い打率でできれば優秀なクリエイターになれるはずです。(略)

意外な掛け合わせを生むには、より多くのD、E、F…という知識を蓄えていくことも大切です。

 

この話は、同じ美術系出身の山口周氏も同様に述べています。

山口さんは、本の中で「独自性を高める」ことを強く意識して論理展開しています。

そのためには、従来の大学での勉強方法のように、すでに体系化された知識をなぞるのではなく、私たちが独自にもつテーマと観点から、知識領域を縦横無尽に飛び越えて(クロスオーバーして)追求するからこそ意味があるということです。

こう聞くと、知識を知ることでどんどん自分の脳が拡張され、無限の可能性が広がっていくような気がしませんか?

 

さらに、知識があれば、どの程度人に受け入れられるものかという「距離感」も分かってきます。

 

市場に受け入れられるレベルの「新しいもの」は、「斬新過ぎる」という意味ではありません。斬新過ぎるというのは、たとえば水野氏が言うように、江戸時代の人にiPhoneを持たせるような、「これまで本当に全く存在しなかったようなもの」という意味です。

 

iPhoneが日本市場に受け入れられたのは、確かに革新的ではありますが、その下地には「ワープロ→固定電話→ガラパゴスケータイ」といった通信技術の系譜が存在しています。その延長線上にあったからこそ、iPhoneは市場に受け入れられたのです。ワープロさえ知らない人は、iPhoneを見てもどう使えるのか理解できず、戸惑うだけでしょう。

 

私も営業や講義を行っていて常々感じることですが、人は、未知の新しいものに接した時、自分の中にある過去の知識と照らし合わせて理解・判断しようとします。なので、過去のデータベースが全くないと、かえって恐怖が生じてくるのです。

 

したがって、関連知識があると「今自分の思いついた価値は、顧客にとってどの程度受け入れやすいのか」を判断できるようになります。

その判断ができるできないでは、結果が180度変わっていきます。

相手の立場に立って距離感が測れなければ、画一的で独りよがりのプレゼンしかできません。

しかし、距離感を知っていれば、相手の知識レベルに合わせて柔軟に対応を変えることができます。

 

このように、新しいものを生み出して顧客に届ける上で、私たち生産者にとって大きな知識は武器になります。

 

客観的な知識があると、物事の本質をより正しく洞察できる

現代ビジネス界の流行りは「デザイン」です。2017年5月に、ZOZO TOWNの前澤社長がバスキアの絵画を62.4億円で落札したという話もありますが、かつてはビジネスリーダーの登竜門だったMBAスクールも、今はその座をアートスクールや美術系大学にとって代わられつつあります*1

 しかし、アートやデザインは、現代においてなぜこれほど脚光を浴びているのでしょうか?

 

水野氏いわく、実は過去の歴史を紐解いていくと、「美しいものに対する欲求」は自然な流れであることが分かるそうです。同時に、この潮流はいずれ早晩「技術革新への欲求」に揺り戻される可能性が高いとも読むことができます。

たとえば戦闘技術がペークを迎えて戦国時代が終わった時、大名たちは茶の湯や芸能に夢中になりました。(略)

利休が生きた時代は、イタリアで起こったルネッサンスが隆盛を迎えた時代とも重なります。奇しくもヨーロッパでも、火薬、羅針盤、印刷技術…と世界的に技術レベルが上がって躍進したのちにルネッサンスは勢いを増しました。(略)

歴史は繰り返すと言いますが、今デザイン・アートがビジネス界で注目されているのは、歴史的必然として起こったもので、いずれまた落ち着いていくとも予想されます。

 

このように、客観的な知識を豊富に蓄えていると、物事の本質を洞察できるようになります。それによって、身近な日常世界でも、今後起こりうる未来について予測を立てることができるようになります。

山手通りなどを観察しているとわかりますが、長靴のようなL字型に建物が建っている土地があります。これはたいてい、道路拡張のために区画整理が行われる予定がある土地で、数年後に取り壊しに応じる建物しか建ててはいけない決まりです。

「広い通りにお店を出したい」と思っている人は、このような通りに目をつけておくと、そこはやがて広い通りになるかもしれません。こうした都市計画は何十年も前から決まっているものなので、知っているか知らないかで正確な予測ができるかどうかが決まります。

知識を備えていると、将来自分はどういう状況に置かれるのかが見えるので準備できますし、リスクも極力減らすことができます。

「今後は〇〇スキルが求められるから今の内から勉強しておこう」「今後は××が流行るから、今のうちに企画を出しておこう」といった判断も、センスが良いものになっていきます。

 

まとめ:もしも「センスのある人」が服選びのアドバイスをしたら

この記事の冒頭で、「友人に服選びのアドバイスをするとしたらどうするか」と質問に対して、水野氏であればどう考えて答えるでしょうか。

 センスがいい服を選ぶには、「好き・嫌い」という定規を捨てることです。

たとえば、「足が細い」とまとめず、「太ももとふくらはぎは細いけど、足首は太め」と細かく観察したり、肌がすごく白いから、好きなのはこの色だけどこっちのほうが似合う」と判断したり、自分を客観視することが大切です。

(略)

人の外見は、内面的な部部の影響を受けます。自分がどのようなキャラクターであるかも考慮しましょう。明るく軽いタイプか、慎重で真面目なタイプか、自分をよく分析してみます。(略)

特性がわかったら、目指すゴールを設定します。内面的な特性である明るさを強調するのか、それともあえて抑えるのかは、どのような条件下で服を着るのかで決まります。(略)

特性とゴールがわかったら、プラスになるところを誇張したり、マイナスになるところをカバーしたりする機能を考えていきます。(略)スカート丈についても、長い、短い、中くらい、というざっくりした指定ではなく、「膝が何センチ出る竹で、裾に向かってやや広がったAラインがいい」という話をしました。

ここまでやるかどうか別として、できるだけ細かく客観的に考えることがポイントです。

 水野氏が伝えたかった「センスをつくる知識」とは、何も本やインターネットだけで得る二次情報ばかりではありません。自分の目による観察という一次情報もまた、センスのよいアウトプットを出すうえでは非常に重要です。

 

双方とも共通しているのは、「感覚的になんとなくこれ、ではなく、細かいところまですべてに根拠を持たせる」ために知識を得るということです。

だからこそ、「だれが・どういう環境で使うのか」をかなり具体的に観察して、対象者に関する情報や知識を得ることにかなりの時間を費やします。それが日本トップクラスのクリエイターがもつ視点です。

 

誰でもできることですが、それをやろうと思うかどうかはその人次第。

 

新しい価値を創造し続ける知的生産者にとって、客観的で豊富な知識は大きな戦闘力になります。知識を楽しみながら蓄積して、よりセンスが良いアウトプットを生み出していきましょう。