ココカラゲンキ!

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ココカラゲンキ!

タクシー運転手からプロフェッショナル精神を教わった件について

こんにちは。kaakikoです。

 

今日は、

「一見どんなに単純に見える仕事も、つきつめてやれば相手を感動させることができる」

というプロフェッショナル精神を教わった話をしたい。

 

先日タクシーに乗ったところ、その運転手のあまりのプロフェッショナルな動きに感動してしまい、その勢いで今回筆を執ることにした。

ちょっと前置きは長くなるが、いきさつから全部書いていきたいと思う。

 

JR新宿駅に出るまでの踏んだり蹴ったり

あの日は2月上旬で、よく晴れていた。しかし頬を撫でる風は、まだうすら寒かった。

そんな日の出来事だ。

 

10年来の友人が上京して京王線沿線に住みはじめたというので、私はその日一緒に遊びに行く約束をしていた。地元の駅からJR新宿駅を経由し、そこで友人の好物であるバターバトラーの手土産を買ってから、10:30に京王線高井戸駅で落ち合う予定だった。

 

しかしそんな大事なときにまさかの寝坊をやらかし、ナビで調べると11:11到着予定とのこと。要するに大遅刻である。焦った私は慌てて「ごめん!!11:11になる!マジすまんm(T o T)m」というラインを送り、家から地元の駅までの約1kmを猛ダッシュした。

 

友人は「いいよ、気にするな~^^♪」と言ってくれたが、久々に会うのに大遅刻は猛烈に申し訳ない。駅で待ってくれている友人の姿を思い浮かべると心臓の鼓動がどくどくいうのを感じながら、なんとか電車に飛び乗った。

 

ナビによるとJR池袋-JR新宿駅間は山手線で8分ということだったが、埼京線であれば6分で着けることが判明。10:54に着いてそこから3分で手土産を買って急げば、ギリギリ11:01発の京王線に滑り込める。地獄に仏とはまさにこのことである。いつもは遅れまくっている埼京線に今回はひたすら感謝しながら、悠々と1番線ホームで電車を待っていた。

 

が。

 

希望の星である埼京線が、遅れたのだ。3分遅れだった。

 

予定の時刻になっても電車が来ず、しかし遅延アナウンスは何もなく、やっぱり山手線に乗った方がいいのではと迷っているうちに山手線が発車し、結局なすすべもなくホームに立ち尽くすしかなかった。(・□・)ポカーン

 

そんなこんなで、JR新宿駅に着いたのは10:57。あと4分だ。今からでも猛ダッシュすれば間に合う。がしかし、埼京線のホームをかけ上がるとそこにはバターバトラーの店が。一瞬逡巡したが、もともと約束していた手前、予定通りバターバトラーを買うことにした。

 

買い終わったのが10:59。そのとき私は甲州街道口にいた。京王線のホームは、目の前の甲州街道を渡って反対側の、そしてそこからさらに地下に降りて行った先である。

どう考えても間に合わなかった。

 

そこで、最終手段のタクシーに乗ることにした。タクシーであれば、10分で着いてなんとか約束の時間に間に合う。その代わり金額は張るが、最後の頼みの綱である。背に腹は変えられなかった。

しかし、横断歩道の前で手を挙げて3台とすれ違ったが、3台とも客を乗せていた。しかも運悪く横断歩道が青になってしまい、タクシーが来なくなる。せっかく久々に友人と会えるのに朝から踏んだり蹴ったりである。

 

結果として約5分程度立ち往生したところ、ようやく1台の黒塗りのタクシーを捕まえることができた。

 

そのとき、時刻は11:05前だった。

 

私が出会ったプロ運転手・T氏

ちょっと前置きが長くなったが、そんなわけで私は車内に滑り込むな否や、こう叫んだわけである。

 

「下高井戸までッ!急ぎ!急ぎでお願いします!!!!!」

 

その運転手は、年齢は30代前半くらいだろうか。黒縁眼鏡をかけた、やせた男性だった。名前をT氏としよう。

T氏は、ジタバタしている私を一瞥するやいないや、こう質問した。

 

「何時までに着きたいですか?」

 

へ(°д°)?

 

これまで何度かタクシーに急いでもらったことはあるが、そんなことを聴かれたことは一度もなかったので一瞬面くらった。が、一抹の期待を込めておそるおそる「出来れば、11:10ごろまでに…」と回答した。

 

それを聴いたT氏は顔色一つ変えることなく、至極淡々とした口調で

「では、高速を使いましょう」

 と提案してきた。

 

私「高速ですか。。。?」

T氏「下道はこの時間だと混んでますから、無理です。でも高速を使えば間に合います」

 

間に合う、だと!?でも、高速道路を使うと料金が跳ね上がるんじゃ......

答えに詰まっている私の顔を見て、T氏はこう付け加えた。

「高速に乗ると時間メーターが止まりますので、高速料金をのせても下道を通るのと大差ありません」

 

そうなのか。であれば、

「それでお願いします!!!!!」

 

しかし内心、本当にあと5分以内に下高井戸につけるのかどうか不安だった。

通常は10分かかる。しかも、万が一高速が混んでいたら、降りるに降りられない.......

初台に差し掛かるあたりから道が混みだしたので、不安が募り「目安で構わないんですが、あとどれくらいで着きますかね。。。?」と聴いてみた。

 

T氏は「あと4分弱ですね。永福寺で出ます」と即答。

その言い方は淡々としていながらも自信がにじみ出ており、有無を言わせぬ空気をまとっていた。

その態度をみて、なんとなく不安がすっと消えていった。

 

初台から首都4号新宿線に入ってみると、予想に反してなんとガラ空き。車の数はほとんどなく、T氏はどんどん加速していった。あっと今に永福寺インターチェンジを通りすぎ、明大前~下高井戸間の甲州街道に降り立った。目的地まであと約300メートルという地点だった。

 

そのとき、時間は11:08すぎ。すごい、間に合ってる!!!

T氏に対して、尊敬の念を湧きあがらせずにはいられなかった。

 

それだけではない。

T氏に、「もう少し走っていくと、左手にコンビニがあると思いますので、そこで降ろしてください」と告げたところ、

「ああ、ありますよね。はい了解しました」

と、完全に地理を把握しているような言い方で返してきた。

そこまで分かってんかい

 

そして最後に。

料金の2470円を払おうとして2500円を出すと、彼は間髪入れずにおつりを30円渡してくれた。

びっくりして「どうして私が2500円を出すと思ったんですか?」と聞いたら、静かな声で

「出すとしたら3000円までかなと思ってたんで、530円用意しとけば対応できるかと

 

細部に亘る彼の想定力に、ただ頭が下がるばかりだった。

以上が、私が新宿で出会ったプロの運転手の話だ。

 

単純に見える仕事も、プロフェッショナルがやれば感動を生む

正直なところ、この事件が起こるまで私は、タクシー運転なんて「誰にでも出来る単純労働」だと思っていた。シンプルに言えば、客を乗せて、目的地まで行って降ろす。

ただそれだけの、至極単純な仕事ではないか。

事実、それまで乗ってきたタクシーの運転手は、そう感じさせるような無機質な対応ばかりだった。ひどいときは、運転手が道を理解しておらず、こちらが案内しながら乗せてもらうこともあった。

 

しかし、そのような単純労働に見える仕事も、プロフェッショナル精神をもって突き詰めていけば、客を感動させることができると私は知った。

 

実際、今回のT氏は以下に挙げる3つの点で傑出していたと思う。

  1. 客の本質的なニーズを理解していた。単に「運ぶ」のではなく、正しい目的を捉え、通常では発想しないような解決策を提案してきた。
  2. 地理状況に精通していた。ただルートを覚えているだけではなく、この曜日でこの時間帯だと、どの道がどの程度混んでいるのか。どこにどんな目印があるか。細部にわたって状況を把握していた。
  3. 客が出す金額を予想し、釣銭のやり取りで手間取らせていない。客の予想を最後まで想定していた。

 

タクシーの運転手で、ここまでハイスペックな人を私は見たことない。

上から与えられた仕事を「ダルッ!」とか言いながら適当にこなす(一部の)ホワイトカワーのサラリーマンよりも、1億倍かっちょいい。彼はまさに「仕事人」である。

 

もちろんこの1件に関しては、タクシー運転手に対する期待値がもともと低いから感動したとか、超急いでいたから余計に感動したとか、いろいろと特殊な前提はあったと思う。

ただ、それを差し引いても、客の立場に徹底して立ってくれる彼に対しては、同じサービス業者として学ぶことが多々あった。また新宿でタクシーに乗る機会があったら、絶対T氏を呼びたい。そんなふうに思える人だった。

 

私の仕事も、一見したところ「誰にでもできる単純労働」はたくさんある。いやむしろ、仕事ってこういう小さな単純労働の蓄積ではないだろうか。

でも、どんなに小さく見える仕事であっても、マニュアルに従うだけではなく自分のアタマで考えて客の立場に立つことによって、時間が経っても客の印象に残るような仕事をすることができる

 

 阪急・東急グループの創設者である小林一三氏は、こんな言葉を残しているそうだ。

「下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ。」

※下足番とは旅館や料亭などで、客が脱いだ履き物の番をする人のこと。現在ではほとんど見かけないですね。

 

 結局、仕事で周囲から信頼されたり自己実現していける人は、置かれた境遇ではなく、どのような目線でその業務にあたるかで決まっていくんだと改めて感じた。

 

私たちも、せっかく時間を使って仕事するのであれば、プロフェッショナル精神をもって、相手を感動させる仕事を狙っていこうじゃないか。